この公案について妙心寺開山・恵玄禅師は〔柏樹子の話に賊之機あり〕と『葛藤集』に示された。しかし、だれも大泥棒の働きをしない。禅の目的は、坐禅によって心中の妄想・煩悩を消し算して、心中に何も残さないこと。残さないから、無・空になる。
では、心中にそびえ立つ柏樹子を消す。坐禅で消してみよう。そうすると、心中から柏樹子が消えて無くなって、空や無になっているはずである。やっと、ここに気が付いた。
現代の禅の指導者は口に〔妙心開山禅師は、柏樹子の話に賊機あり〕と言っているが、彼らが大泥棒して盗人になって、心中の柏樹という煩悩・妄想を切り消せというのを、今まで耳にしたことがない。
庭前の、とはどう言うことであろうか。思うに、庭前の、お互い 心の庭であろう。柏樹子は、お互い妄想・煩悩であろう。庭前の柏樹子を斬り消し算して、心中の妄想・煩悩を盗み出してしまえ、であろう。そうしたら心中の妄想・煩悩がなくなって『般若心経』の空になれる。
柳緑花紅
▼明けましておめでとうございます。昨年はご指導いただいきましてありがとうございました。今年もどうぞよろしくご指導下さい。しかし、本当にアッという間の一年でした。年々歳々花相似たりですが、歳々年々人同じからず。唐詩の歌のようでした。
▼過ぎた秋にまた中国に往きました。あの玄奘三蔵法師の生家も訪ねました。現在は玄奘三蔵の長兄の系統の陳小順さんがご当主で、今回再会しました
▼村の幹部で、私が訪ねましたら、駆けつけてくれました。第68代目だそうです。おみやげを持参しました。よく見たら中国製の時計です。まあ、長距離飛んでいったのですから許して貰いましょう
▼なんでも、もうすぐ玄奘三蔵法師のお寺を一億五千万元かけて工事をするそうで、私が二十七年かけて追跡した玄奘ルートの写真を記念館に掲げるから、必ず招待すると言ってました。そうは生きられない
▼帰りにご自宅に呼ばれました。獲りたてだからと言って沢山のリンゴをくださいました。こっそり一個だけトランクに忍ばせて帰国して食べました。昔の味がしました
▼NHKの『般若心経』の一年間の資料とか書籍なども送ってと言うので今、発送したところです。村のレストランで昼食を頂き、県のトップとも会見、記念館に資料を頂きたいと言われ、また、かき集めているところです
▼玄奘誕生地で68代目と懇談していたら、事務所の方から、日本人が一人こちらに向かってくると。男性で同世代の人でした。簡単なやりとりをして別れました
▼帰国したら、その方からお手紙を頂きました。定年退職後に、独学で中国語を学び、原文の『史記』を完訳したので、一人旅をしていたのだそうです。杜甫、殷の遺跡も廻ったとか
▼時間の使い方、自分の人生に対しての気持ち。素晴らしい生き方だとは思いませんか。私も鞭はいりました
▼その後、河北・河南省に点在する禅寺をいくつか訪ねました。なかには、多分あなたが日本人の僧侶として訪問したのが初めて、と言われたところがありました
▼最近まで、ロケットの発射地に近いと言うことで、外国人は近寄れなかったとか。白崖山に南陽慧忠、香厳智閑禅師を廻り、首山・慧可・風穴・丹霞天然禅師の当時の根拠地も
▼十一月には中日新聞で西安、十二月は単独で江蘇省の禅寺巡り。だんだん取材の終わりが近づきました。時間と競争なんかしませんが、出来うる限りのことはしておきます
▼母が突然元気になりました。いつもは、眠り込んでいて意識もはっきりしない状態でしたが、この日は違いました。私の顔に気が付くと、左手を挙げて来ました。手を握ると暖かい
▼離そうとすると、また手を起こす。その間、言葉にならないけれど、なにやら喋っています。意識朦朧として、ここ数ケ月昏睡でしたが、暫くぶりで再会したようなものです
▼なにやら口を動かし続けの母でした。無言であっても生きているだけでも素晴らしい。母って得ですな。それに比べて私ども親爺は煙たがれる。いいけれど、さ
▼今年に入って『碧巌禄』『無門関』遇わせて百四十八則を解釈。私本として。分からないまでも訳しておきました。どうやら、鞭が入ったようで、今度は『葛藤集』を解釈し始めました。そのうちのいくつかを寺報に掲載します
▼この前までは、さっぱりだった公案。老婆親切を頂いて、少しだけ光明が差してきました。幽かな光を頼りに前進してゆきます、お楽しみに。
謹賀新春。(哲明)