こさめひたき 松原哲明
中国・唐代に傳大士という居士がおりました。ちょうど達磨大師の時代と同じで、傳大士は松山に住むよう大師に命じられます。
幼い時は長江のほとりで漁師が獲ってきた魚の見張り役をにない、漁師がまた漁に出かけると彼は魚のカゴに近づき「逃げたかったらお逃げ、居たかったら居ていいよ」と語りかけたといわれております。
十六才で結婚し、二子を得ます。日中は働らき、夜になると坐禅してた。傳大士に『心王銘』の著があります。そこに、
水中の塩味
色裏の膠青
があります。
海水が塩からいのは水中に人間の眼には見えない塩分があるからと。でも、塩からくなくては海水は成立しませんね。
色裏、つまり絵具の中には膠が入っておりますが、これまた人間の眼にふれる事はありません。同じく、膠がないと絵具は成り立たない。
人間の心も同じです。人間の中には人間には眼に見えぬ心がある。なくては人間が成り立ちません。
次の詩は北原白秋の「こさめひたき」。眼に見える色と目に見えぬ声とでもって詩った禅の世界、ぜひ味わって下さい。
色はあり、声にのみ、
こさめひたき、
雫のみこまかなる
この朝あけ。
花はあり、影にのみ、
ひとりしづか、
香のみ寂びたもつ
杉よ檜。
巣は懸る、高くのみ、
ウメノキゴケ、
気色のみ、母鳥や
姿、羽ぶり。
現あり、しろくのみ
濡るる光、
卵のみ、おそらくは
四つか五つ。
色はあり、声にのみ、
こさめひたき、
雫よ雫よと、
ただ幽かに。

千葉武彦和尚・晋山
龍源寺の徒弟であった千葉武彦和尚が、野火止の平林寺で修行後、五月二十九日にめでたく、島根県斐川町の妙心寺派十楽寺の住職となる晋山式がとり行われました。十楽寺は平林寺の師家、指月庵老師が幼ないときに預けられていた処で、当日は老師も参列、感無量の様子でした。
出雲空港や出雲市駅に車で十分のところ。境内のすぐ近くを山陰本線が走るという、とってものどかなお寺です。晋山式には十楽寺の関係寺院や役員の方々が、まるで自分のことのように盛りあがて下さり感謝しております。好天にめぐまれ、お寺も一新され、千葉和尚の今後の活躍が待たれます。きっと、がんばって斐川の地に、禅の法灯をともしてくれるにちがいありません。
〈結婚のご報告〉 松原行樹
平成十七年五月二十八日、当山本堂に於いて、恵比寿松泉寺・森源耕ご住職の戒師のもと、仏前結婚式を挙げさせていただきました。両家の親族が見守る中、万端無事円成の運びと相成りました。今後は龍源寺の副住職、大学院、ご縁のあるお寺のお手伝いに打ち込んで参ります。
二人で力を合わせて邁進して参りますので、今後とも変わらぬ御法愛を賜りますよう、よろしくお願い申しあげます。
禅の会・軽井沢のお知らせ
目 的 坐禅による自己修練
──上級坐禅会──
指 導 龍源寺副住職
日 時 平成17年8月26日(金曜日)
〜28日(日曜日)2泊3日
日月庵に現地集合・現地解散
原則として、途中参加不可。
8月26日
(18時、星雲苑研修所集合)
※夕食はすませてきてください。
8月28日(8時頃解散)
持ち物 シーツとタオル2枚
費 用 ¥5,000円
所在地 群馬県吾妻群長野原町北軽井沢
日月庵・坐禅堂
電話番号 0279−84−4206
詳しくはこちらから
破草鞋 松原泰道
“生涯修行”が私の人生の杖ことばですが、九十八歳の老齢の上に腰痛で坐禅ができません
○いま私のできる修行は読書と執筆です。
○若い時と違い、記憶力もガタ落ちで、同じページを何べん繰り返し読み返しますが、おかげで深か読みが得られるのは有り難い
○私の読書は来世の説法のための充電です
○記憶力の稀薄をカバーする熟読の熟読ですから今の私にとって読書は修行です
○私事ですが私達夫婦の結婚歴は六十六年、ダイヤモンド婚は遠くの昔で、エヤ婚
○家内は脳梗塞で左脳を冒され理性と判断力が衰えました。しかし落ちこまずに元気なのを喜んでいます
○右半身不自由な家内との二人三脚ならぬく二人二脚の旅を続けています
○「いつ死ぬる木の実はまいておく・山頭火」が好きで余生時間秒読みに入った私ですが、仏法の種をまき続けています
○月一回いろいろの縁で長崎や奈良の人が四、五人寺に集って勉強会をしています
○例月といっても一・二・七・八月は休講ですが、その他の月の最終日曜日午後二時から四時半まで
○末女・要子の嫁ぎ先、世田谷区野沢龍雲寺(電話三四二一−〇二三八)の花園会法話会で法話をしております。お出かけ下さい(交通図は龍源寺にあり)
○いずれも私自身の勉強です
○苦しいけれど楽しい。
柳緑花紅
今夏も暑くなるのでしょうか。梅雨入り宣言が出たあと、一向に雨のきざしがありません。今日も三十度の日照りの中を出講しました。街ゆく人たちはハンカチで汗をしきりにふいていますが、私は汗ひとつかかず。どうやら年をとりだし、暑さも感じなくなったようですよ。年とると寒さがこたえるとききましたが、確かに寒さに弱くなりました
▼父母は来年、あわせて二百才になりますが、安定した生活をしているように見えますからどうぞご安心のほどを。二人とも医者にかかるような病気もなく、ホーム・ドクターから、やはりわが家に住んでいるのが老人には一番よいと言われています
▼ひとり?不調なのは末息子の樹々クン。最近、入院して手術を受け一日で退院し、病臥中ということでしょうか、吠える気力もなく台所に伏せています。ただ食欲はすさまじく、この様子ですと、再びヤンチャ犬坊主となることでしょう。わが家の一員ですので、検査と入院中は本当にボツンと穴があいたようで、彼の占める重さを実感いたしました
▼戦後から収入源としてアパートを建てましたが、下水道工事が手抜きで、あちこちと管がつまり閉口してきました。応急手当で済ませて来ましたが、この際思い切って境内を掘りおこし、配管のすべてを新しく交換しました。結局、いい加減な工事をすると費用は倍にふくれあがるということ。高い授業料を払ったところです。
▼いよいよ四月からNHK教育テレビで「心の時代」が放映となりました。毎月第二週にNHKのスタジオに足を運び、一時間番組なのにぴったり一時間のみのビデオ収録なのです。いわゆる「ナマモドキ」です。一回目はスタジオ内がカラカラに乾燥していて、唇をなめなめ話をすすめたのですが、二回目からはいつもの通りのマイペースでやらせていただいております
▼相手方をつとめて下さるのが草柳隆三アナウンサー。ベテラン中のベテランですからすべてお任せ。五十九分十五秒までは自由に使えるのです。そのあと四十五秒で草柳さんが締めて下さるので、安心してやっております。ご安心ください
▼その後、突然NHK総合テレビの朝番組「ホットモーニング」で、生命科学者・柳澤桂子女史の『生きて死ぬ智恵』の評唱と「シルクロード」へのコメントを求められました。柳澤桂子女史はアメリカのコロンビア大学で博士号をとり、研究中に突如体調を崩され、研究が出来なくなり失職、以後三十六年間、ほとんど寝たきりの生活を強いられておりましたが、救いを宗教に求め『般若心経』を信心し、すばらしい著作を世に出されたのです
▼これは完全な生番組でした。二つのテーマを合わせると二時間。時計を相手にしゃべりましたが、ガックリ疲れ果てました。しかし、河内・黒崎両アナウンサーに助けられ、ユーモアも再三発することができ自分で言うのもおかしなものですけれど反響も大きく、今秋また番組化するそうです。おふざけ・おあそびなどに出演するのではないので、どうかご理解のほどを。タレントのようで嫌ですけれど釈尊仏教の本質を伝えるには絶好の時かと思ってやらせてもらっております
▼信樹副住職と行樹副住職にも雑誌やテレビでの坐禅指導の仕事が入っています。年配者には年令的に具合いが悪いけれど、若者たちの指導にはうってつけ。五月には覚樹副住職もアメリカから一時帰国、ビザ更新のためですが、久方ぶりに水入らずの日々を送ることができました。彼ら三人による編集で、主婦之友社より『禅の暮らし』『初めての写経お手本帳』の二つの本が出版されます。ウラボン法要の日にはお寺で発売されます
▼このようなことから龍源寺坐禅の会は常に満員となりました。一二〇名以上ですので、本堂も書院も会館もいっぱい。坐禅用の布団が一二〇枚しかありませんので、もうお手上げです。月に二回(今は一回)にしてさばくしかありません。うれしい悲鳴とでも申しましょうか
▼お寺の境内が四季の花で色どられ、道ゆく人たちの心をいやしてくれています。これからも禅境らしいたたずまいにしてゆくつもり。どうぞ、好天気の日に、おまいり下さいませ
▼千葉県の鹿野山マザー牧場内の仏母寺(安井玉峰尼)が臨済宗妙心寺派に属すこととなり、東京教区第一部に編入されました。龍源寺が寺附法類となって、山田無文老師開山の仏母寺をバックアップすることになりました。(哲明)